工房(作品置き場)

📚【おじさんの宝物】

ある家に、おじさんは小さな宝物を大切に、大切に集めていました。森の木の実、おもちゃの破片、ミノ牛乳の空瓶や書き損じの申請書──

妻であるおばさんは言います。
「そんなゴミは捨ててちょうだい。」
おじさんは穏やかに答えました。
「うん、でも、どれも大切な宝物なんだ。」
何度も繰り返されたやり取りでした。

おばさんは、そんな物は忘れて、もっと自分を見てほしいと願いました。そうしたら、二人とも幸せに暮らせるのに──と。

ある日、おばさんはおじさんの宝物をすべて捨ててしまいました。そして、おじさんの帰りをそっと待ちました。

おじさんは帰ってくるなり、宝物の部屋へ向かいます。小さな悲鳴が聞こえたきり、何も起こりませんでした。おばさんは肩透かしを食らったように、「なぁんだ、もっと早くこうしていればよかった」と、晴れやかな気持ちで寝床に入りました。

それから。おじさんは怒ることも泣くこともなく、ただ静かに、淡々と生きるようになりました。おばさんが望んだ“優しい夫”になったのです。

しかし、その優しさの裏には、かつての情熱や喜びはもうありません。おじさんは夜な夜な窓辺に座り、星空を見つめるだけ。宝物とともに、心の一部も失われたのでした。

おばさんは手に入れた“望む姿”に満足しましたが、同時に奇妙な空虚を感じます。表面的には幸せそうでも、本当に大切なものはここにはない──そんな気持ちでした。

「…ねえ、少しなら、また集めてもいいけれど。」おずおずと尋ねます。
「いや、もういらない。」

困ってしまったおばさんは、 迷った者が時折訪ねるという、森奥の古い木のもとへ向かいました。

「あのー、うちの夫が壊れちゃったんだけど、どうにかしてくれませんか。」

古い木はゆっくりと、静かに言いました。

「壊れた、…それはね、壊したというの。大切なひとの大切はもう戻ってこないけれど、よければこの木の実をどうぞ。」

「でも、もういらないって。」

「何か変わるかもしれないし、何も変わらないかもしれない。またおいで。木の実はきっと、明日もなっているから。」

おばさんは、なんだかよくわからないまま木の実を受け取り、おじさんの待つ街へと帰りました。

家には灯りが灯っています。今夜は木の実のシチューにしよう──いや、庭に埋めてみようかしら?

そんなことをあれこれ思いながら、「ただいま」と、ドアをそっと開けるのでした。

※AI創作作品を元に投稿者が調律したものです。

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