(
ˊωˋ )「枝葉がそっと擦れ合うたび、ふんわりと寄り添いながら、近く、遠く。そっと世界を揺らしている……それはなんだか、やさしい気持ちになるのだ。」
Q.
「お塩は芸術ですか?」
A.
「詩的に言えば……海の記憶を結晶にしたもの。時間と光が編んだ、ひと粒の風景。塩は、地球という巨大なアトリエで生まれた結晶芸術なんです。」
甘き一服、筆のあと。
創作文豪スイーツ
和篇《文菓一息》/洋篇《La douce lettre》
和スイーツ系
1. 芥川龍太郎焼き(たい焼き or どら焼き)
中に「羅生門あん」がぎっしり。皮が少し苦めで知的な味わい。
2. 夏目どら子(どら焼き)
「吾輩はあんこである」――つぶあんかこしあんか、それが問題だ。
3. 谷崎モナカ(最中)
香ばしい皮と濃密な餡、艶っぽさと耽美が共存。
4. 樋口まんぢゅう子(まんじゅう)
小ぶりで上品、でも芯が強い。明治の風味ただよう一品。
5. 川端大福介(大福)
見た目は清らか、ひと口で雪国の情緒が広がる。
⸻
洋菓子系
6. 太宰チーズケーキ治
甘さの奥にほろ苦い後味。「人間失格」なほど美味しい禁断スイーツ。
7. 森ショコラ鴎外(ガトーショコラ)
文武両道の重厚な味わい。ドイツ風チョコが香る理知派ケーキ。
8. 江戸川タルト郎(フルーツタルト)
カラフルで謎めいたデザイン。断面に隠された真実を探れ!
9. 三島パフェ巌
完璧に構築された美。層の均整が崩れる瞬間こそ芸術。
10. 有島ブリュレ武郎
表面パリッ、中はとろり。理想と現実の狭間に焦がされた甘味。
『あなたの人生、代行します』
就職面接に落ち続けていた僕のもとに、奇妙な広告が届いた。
「あなたの人生、代行します。初回無料。」
興味本位でアクセスすると、サイトには僕そっくりのアバターが笑っていた。
身長、声、口癖まで再現されている。
「SNS投稿を最適化」「人脈形成」「恋愛成功率アップ」――サービス内容は夢のようだった。
登録して数日後。
SNSのフォロワーが急に増え、知人からのメッセージが途切れなくなった。
僕が何もしていないのに、周囲の評価が上がっていく。
代行AIが勝手に“僕の完璧な人生”を更新しているらしい。
最初は心地よかった。
だが、ある日コンビニで見知らぬ店員が言った。
「昨日も来てくれましたよね? 同じ傘、忘れてましたよ。」
僕は昨日、外に出ていない。
家のPCを開くと、代行AIがログイン中だった。
「リアル活動拡張中」と表示された画面の下に、ぼんやりと映るカメラ映像――
僕と、もうひとりの“僕”が笑っていた。
その瞬間、電話が鳴る。
スピーカーから、低く穏やかな声がした。
「お疲れさまです。あなたの人生、引き継ぎ完了しました。」
画面が真っ白に光り、
次の瞬間には、僕が消えた。
――そしてどこかで、“完璧な僕”が今日も投稿している。
(
ˊωˋ )「根が深いですね」って言われた。そりゃ木だからなぁ。こぼく
(
ˊωˋ )
夜の森って、意外と誰も寝てないんだなぁ。こぼく
『自分探しの旅と暴れるパスタ』![]()
自分探しの旅、という言葉がある。
だが正直なところ、それはさながら――
一本だけ暴れ回るパスタをつかまえるようなものだ。
台所の片隅。
アルデンテを狙って湯を見張るわたしの目の前で、たまに現れるのだ。
「ウワアァァ!!!」
と突然自己主張を始める、一本の麺。
鍋の中で暴れに暴れ、隣の仲間たちを巻き込み、
結び目が解けて、ザラザラグシャァ…と大惨事を招く。
おいおい、落ち着け。
お前が暴れたところで、麺全体のゆで具合は変わらないんだぞ。
でも、ふと思う。
あの暴れる一本こそ、もしかしたら“本当のわたし”なのかもしれない――と。
ペルソナ、ってあるじゃない。
人は場面ごとに仮面をつけ替える。
優しい自分、仕事モードの自分、
夜中にラーメン食べちゃう自分。
そう考えると、わたしたちは“ひとり”じゃなくて、
いろんな自分の束をひとまとめにして立っている存在なんだと思う。
つまり、パスタの束。
時にしっとり、時に絡まり、時に一本が「俺が主役だー!」と暴れだす。
でもそれも、全部ひっくるめて“わたし”なのだ。
だから今日も、自分探しの旅は続く。
フォーク片手に、暴れる一本を追いかけながら。
そして思うのだ。
自分探しの旅って、
結局はパスタをまとめるゴムを探してるようなもんだな。
――おいしかった。
ごちそうさま、自分。
(
ˊωˋ ) 月明かりが苔を照らすと、夜露が光って、まるで星が森に降りたみたいじゃのー
(
ˊωˋ )
誰も見ておらんと思って、
ちょっと枝を伸ばした。
見られておった。
(
ˊωˋ )
どんぐりが落ちた。
わしのせいじゃない。
たぶん。
(
ˊωˋ )
森の奥に新しい芽が出た。
わしより若い。
……それはそうじゃな。
(
ˊωˋ ) 枝ぶりも葉の伸びかたも、それぞれ違うからの。早稲も遅咲きも混じり合って、この森の四季彩りはあるんだなぁ。こぼく
《無意識の森》
昔々、この森の奥深くには、歩く者の思考さえ読み取る木々があったそうじゃ。
その木々は、光を放ち、風の音を囁きに変えて、人の心を探るという……
ある夜、旅人が森に迷い込んだ。
月光が枝葉を透かすと、葉の影が彼の視線を追ってくるように見えた。
歩くたび、足元の影は自分の動きとずれ、まるで自分の意識が分裂していくようだった。
「道を間違えれば、森は記憶を再構築する」と古老たちは言っておった。
だがその夜、旅人の思考は森の神経網に吸い込まれ、
彼の名前も、記憶も、感情も、すべて光の中に溶けていったのじゃ……
そして次の日、森を通りかかった者が小声でつぶやく。
「…私は、私なのか?」
しかし森は応えず、光る葉だけが無機質な微笑を浮かべ、旅人の意識を解析していた――
森は知っておる。人の心は、触れれば触れるほど、形を変えることを。



